【数列】cosnθ型の数学的帰納法の解き方を徹底解説!|普通の帰納法では証明できない

高校数学

みなさんどうも、こんにちは。今回は、\( \cos{n\theta} \)型の数学的帰納法(3項間漸化式数学的帰納法)について解説していきます。

cosnθ型の数学的帰納法の解き方

前々回、3項間漸化式数学的帰納法について解説しました。今回は、その応用例の1つである\( \cos{n\theta} \)型の数学的帰納法について紹介します。

まず、3項間漸化式数学的帰納法について復習しましょう。3項間漸化式の数学的帰納法では、普通の帰納法は使うことができず、次のように証明するのでした。

3項間漸化式の数学的帰納法

(I)\(n=1,2\)のとき成立する

(II)\(n=k,k+1\)のとき成立すると仮定すると,\(n=k+2\)のときも成立する

なぜ、この帰納法で証明できるかは、前々回の記事をご参照ください。

3項間漸化式の数学的帰納法の応用問題である\( \cos{n\theta} \)型の数学的帰納法について考えます。

先にこの問題のポイントを言ってしまうと、次の式変形ができるかどうかです。

\( \cos{n\theta} \)型の数学的帰納法のポイント

$$ \cos{ (n+2) \theta} = 2 \cos{\theta} \cos{ (n+1) \theta} – \cos{n \theta} $$

これが\( \cos{n\theta} \)型の数学的帰納法における唯一にして最大のポイントです。これさえ押さえることができれば、あとは前々回やった3項間漸化式数学的帰納法と変わりません。

上の式は覚える必要はありません。和積公式から簡単に導くことができます。上式を導くのに使う和積公式は次の式となります。

和積公式

$$ \cos{A}+\cos{B} = 2 \cos{ \frac{A+B}{2} } \cos{ \frac{A-B}{2} } $$

導出

\begin{eqnarray*}
\cos{n\theta} + \cos{ (n+2) \theta} &=& 2 \cos{ \frac{n\theta+\{(n+2) \theta\} }{2} } \cos{ \frac{n\theta-\{ (n+2) \theta)\} }{2} } \\
&=& 2 \cos{\theta} \cos{ (n+1) \theta}
\end{eqnarray*}

移項すれば

$$ \cos{ (n+2) \theta} = 2 \cos{\theta} \cos{ (n+1) \theta} – \cos{n \theta} $$

となるので、和積公式を用いて簡単に導くことができました。

cosnθ型の数学的帰納法

では、実際に問題を見てみましょう。

例題:cosnθ型の数学的帰納法

例題

(1)\(n\)を自然数とする。三角関数の加法定理を用いて,等式
$$ \cos{ (n+2) \theta} + \cos{n \theta} = 2 \cos{\theta} \cos{ (n+1) \theta} $$
を導け。
(2)\( \cos{2 \theta} = T_2 (\cos{\theta}) \),\( \cos{3 \theta} = T_3 (\cos{\theta}) \)を満たす整式\(T_2 (x) \),\(T_3 (x) \)をそれぞれ求めよ。
(3)自然数\(n\)に対し,\( \cos{n \theta} = T_n (\cos{\theta}) \)を満たす整数係数の\(n\)次の整式\(T_n (x)\)が存在することを示せ。

(埼玉大)

方針:(1)前節では、和積公式から求めましたが、本問では「加法定理を用いて」という指定があるので、和積公式の導出から行います。
(2)2倍角の公式,3倍角の公式から簡単に求められます。
(3)3項間漸化式の数学的帰納法を用いて証明します。

解答

(1)加法定理より
$$ \cos( \alpha + \beta ) = \cos{\alpha} \cos{\beta} – \sin{\alpha}\sin{\beta} $$
$$ \cos( \alpha – \beta ) = \cos{\alpha} \cos{\beta} + \sin{\alpha}\sin{\beta} $$
である。上式2式を足すと、
$$ \cos( \alpha + \beta ) + \cos( \alpha – \beta ) = 2 \cos{\alpha} \cos{\beta} $$
となる。\( \alpha = (n+1)\theta\),\( \beta = \theta \)とすると、
$$ \cos{ (n+2) \theta} + \cos{n \theta} = 2 \cos{\theta} \cos{ (n+1) \theta} $$
となるので、与式は示された。

(2)倍角の公式より
$$ \cos{2\theta} = 2\cos^2{\theta} -1 $$
であるから,
$$ T_2 (x) = 2x^2 -1 $$
となる。また,3倍角の公式より
$$ \cos{3\theta} = 4\cos^2{\theta} -3 \cos{\theta} $$
となるから、
$$ T_3 (x) = 4x^3 -3x $$

(3)\( \cos{n \theta} = T_n (\cos{\theta}) \)を満たす整数係数の\(n\)次の整式\(T_n (x)\)が存在することを数学的帰納法で示す。
(i)\(n=1,2\)のとき
\(n=1\)のとき、\( T_1 (\cos{\theta}) = \cos{\theta} \)であるから、\( T_1 (x) =x \)となり、成り立つ。\(n=2\)のときも(2)より成り立つ。
(ii)\(n=k,k+1\)のとき
\(n=k,k+1\)のとき、\(T_k (x) \)、\(T_{k+1} (x) \)が存在すると仮定する。
(1)より
$$ \cos{ (k+2) \theta} = 2 \cos{\theta} \cos{ (k+1) \theta} – \cos{k \theta} $$
であるから
$$ T_{k+2} (x) = 2 x T_{k+1} (x) – T_k (x) $$
仮定より、\(T_k (x) \)、\(T_{k+1} (x) \)が存在するので、\(T_{k+2} (x) \)は整数係数の多項式となる。よって、\(T_{k+2} (x) \)は存在する。
以上により、\( \cos{n \theta} = T_n (\cos{\theta}) \)を満たす整数係数の\(n\)次の整式\(T_n (x)\)が存在することが示された。

補足:チェビシェフ多項式について

なお、例題(3)のような多項式のことを、チェビシェフ多項式といいます。

チェビシェフ多項式

\( \cos{n\theta}\)は\( \cos{\theta}\)の\(n\)次多項式で表せる

実際、

\( \cos {2\theta} = 2 \cos^2 {\theta} -1 \)
\( \cos {3\theta} = 4 \cos^3 {\theta} -3 \cos{\theta} \)
\( \cos {4\theta} = 8 \cos^4 {\theta} -8 \cos^2{\theta} +1 \)

となり、\( \cos{n\theta}\)が\( \cos{\theta}\)の多項式で表せていることが分かると思います。\( x = \cos{\theta} \)とおき、\( \cos{\theta}\)の\(n\)次多項式を\( T_n (x) \)で表せば、

\( T_2 (x) = 2 x -1 \)
\( T_3 (x) = 4 x^3 -3 x \)
\( T_4 (x) = 8 x^4 -8 x^2 +1 \)

となります。一般に、この\( T_n (x) \)をチェビシェフ多項式と呼びます。

おわりに

今回は、3項間漸化式数学的帰納法の応用例の1つである\( \cos{n\theta} \)型の数学的帰納法について解説しました。\( \cos{n\theta} \)型の数学的帰納法はチェビシェフ多項式と絡めて出題されることが多いので、自分の持っている問題集等で演習を重ねておくと良いでしょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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