みなさんこんにちは。今回は、三角方程式の解き方について解説します。
三角方程式(角度比較型)とは
三角関数を含む方程式を三角方程式、三角関数を含む不等式を三角不等式といいます。三角方程式の問題というと、2\(\theta\)や3\(\theta\)を2倍角の公式や3倍角の公式を用いて\( \theta \)に統一し、その後置き換え、2次方程式や3次方程式をといて解決するという問題が多いですが、そのような三角方程式の問題よりも、もっとシンプルな(なのに知名度が低い)三角方程式の問題があります。それが、三角方程式の角度比較タイプの問題です。
具体的な例題は後で扱いますが、角度比較タイプの三角方程式は次の公式を用いることが多いです。
\(n\)を整数とする。
$$ \sin{x} = \sin{y} \iff x=y+2n\pi \quad または \quad x=\pi – y +2n\pi $$
$$ \cos{x} = \cos{y} \iff x=y+2n\pi \quad または \quad x=- y +2n\pi $$
$$ \tan{x} = \tan{y} \iff x=y+n\pi $$
上式は覚える必要はありません。単位円を書けば、すぐに導くことができます。
① \( \sin{x} = \sin{y} \)の導出
単位円を描けば、下図のようになる。

単位円より、一つの解を\(y\)とすると、\(\pi-y\)も解となる。よって、一般解は、
$$ x=y+2n\pi \quad または \quad x=\pi – y +2n\pi $$
② \( \cos{x} = \cos{y} \)の導出
単位円を描けば、下図のようになる。

単位円より、一つの解を\(y\)とすると、\(-y\)も解となる。よって、一般解は、
$$ x=y+2n\pi \quad または \quad x=- y +2n\pi $$
③ \( \tan{x} = \tan{y} \)の導出
単位円を描けば、下図のようになる。

単位円より、一つの解を\(y\)とすると、一般解は、
$$ x=y+n\pi $$
となる。
例題では別の方法で導出してみたいと思います。
三角方程式
では、実際に例題を見てみましょう。
例題1:簡単な三角方程式
次の方程式を解け。
(1)\(\sin{x} = \sin{y}\)
(2)\(\cos{x} = \cos{y}\)
(3)\( \tan{x} = \tan{y} \)
方針:冒頭の導出でやったように、単位円からも答えを求めることができますが、(1)(2)は和積の公式から求めてみたいと思います。
(1)で使う和積の公式
$$ \sin{A}-\sin{B} = 2\cos{ \frac{A+B}{2} } \sin{ \frac{A-B}{2} } $$
(2)で使う和積の公式
$$ \cos{A} – \cos{B} = -2 \sin{ \frac{A+B}{2} }\sin{ \frac{A-B}{2} } $$
(3)は式変形から求めてみたいと思います。
(1)\(\sin{x} = \sin{y}\)より
$$ \sin{x} – \sin{y} = 0 $$
和積の公式より
$$ 2\cos{ \frac{x+y}{2} } \sin{ \frac{x-y}{2} } = 0 $$
よって
$$ \cos{ \frac{x+y}{2} }=0 \quad または \quad \sin{ \frac{x-y}{2} }=0 $$
以上より
$$ \frac{x+y}{2} = \left(\frac{1}{2} +n \right)\pi \quad または \quad \frac{x-y}{2} = n\pi $$
これより
$$ x=y+2n\pi \quad または \quad x=\pi – y +2n\pi $$
(2)\(\cos{x} = \cos{y}\)より
$$ \cos{x} – \cos{y} = 0 $$
和積の公式より
$$ -2 \sin{ \frac{x+y}{2}} \sin{ \frac{x-y}{2}} =0 $$
よって
$$ \sin{ \frac{x+y}{2}}=0 \quad または \quad \sin{ \frac{x-y}{2}} =0 $$
以上より
$$ \frac{x+y}{2} = n\pi \quad または \quad \frac{x-y}{2}=n\pi $$
これより
$$ x=y+2n\pi \quad または \quad x=- y +2n\pi $$
(3)\(\tan{x} = \tan{y}\)より
$$ \tan{x} – \tan{y} = 0 $$
$$ \frac{\sin{x}}{\cos{y}} – \frac{\sin{y}}{\cos{y}} = 0 $$
通分すると
$$ \frac{\sin{x}\cos{y}-\sin{y}\cos{x}}{\cos{x}\cos{y}} $$
$$ \sin{x}\cos{y}-\sin{y}\cos{x} = 0 $$
$$ \sin(x-y) =0 $$
$$ x-y=n\pi $$
$$ x=y+n\pi $$
答案に書くときは、単位円から導く方法よりも和積公式から導出する方がスッキリすると思います。
演習1:簡単な三角方程式
ここで、簡単な三角方程式の問題を解いてみましょう。
次の方程式を解け。
(1)\(\sin{x} = \sin{1}\)
(2)\(\cos{x} = \cos{1}\)
(3)\(\tan{x} = \tan{1}\)
例題2:三角方程式
\( 0 \leq x < \pi \)のとき、次の方程式を解け。
$$ \sin{3x} = \sin{2x} $$
(京都大)
方針:冒頭で導出した以下の公式を使います。
$$ \sin{x} = \sin{y} \iff x=y+2n\pi \quad または \quad x=\pi – y +2n\pi $$
\( n \)を整数として、
$$ \sin{x} = \sin{y} \iff x=y+2n\pi \quad または \quad x=\pi – y +2n\pi $$
が成り立つから、
$$ x = 2n\pi,\frac{2n+1}{5} \pi $$
\( 0 \leq x < \pi \)より
$$ x=0,\frac{\pi}{5},\frac{3\pi}{5} $$
例題2の補足
$$ \sin{3x} = \sin{2x} $$
上記方程式において、2倍角と3倍角の公式から、\( \sin{x} \)と\( \cos{x} \)の値を求めることができる。2倍角と3倍角の公式より
$$ 3\sin{x}-4\sin^3{x} = 2 \sin{x}\cos{x} $$
$$ \sin{x} ( 3 – 4 \sin^2{x} -2 \cos{x} ) = 0 $$
$$ \sin{x} ( 4 \cos^2{x} -2 \cos{x} – 1) = 0 $$
よって、
$$ \sin{x} = 0,\cos{x} = \frac{1 \pm \sqrt{5} }{4} $$
と求められる。例えば、解答2の結果と合わせると、
$$ \cos{\frac{\pi}{5}} = \frac{1 + \sqrt{5} }{4} $$
$$ \cos{\frac{3\pi}{5}} = \frac{1 – \sqrt{5} }{4} $$
と求めることができる。
演習2:三角方程式
\(0 < \theta < \displaystyle \frac{\pi}{2} \)の範囲で次の方程式を解け。
$$ \sin{4x} = \cos{x} $$
(センター試験 改)
おわりに
今回は、角度比較型の三角方程式について扱いました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。