今回は、大学入試の典型的な問題である「2つの円の交点を通る直線の方程式の求め方」について解説していこうと思います。この記事では同値変形を用いた求め方について解説しています。円束を使った考え方での解説は当ブログの他記事をご参照ください。
2つの円の交点を通る直線の方程式の求め方
大学入試の典型的な問題として、2円の交点を通る直線の方程式を求める問題があります。つまり、問題文で2つの円の方程式が与えられ、その2つの円の2つの交点の直線の方程式を求めるという問題です。

この問題のポイントは次の2つです。
1° 円の交点を求めようとしない
2° 同値変形
まず、1の円の交点を求めようとしないですが、実際に円の交点を求めようとすると、結構大変です。確かに、円の交点を求めると直線の方程式を求めることはできるのですが、計算が煩雑になり非常に大変です。これ以外に楽な方法を考えましょう。
同値変形を使えば、かなり楽に求めることができます。同値変形に関しては、次節で解説します。
同値変形とは
同値変形とは、式変形のうち、式の意味が変わらない変形のことを言います。同値であるとは、式の右向きの矢印(→)と左向きの矢印(←)が両方とも成り立つことを言います。例えば、次の変形は同値変形です。
\[
\left\{
\begin{array}{l}
x^2+y^2 =25 …①\\
y=-x+5 …②
\end{array}
\right.
\Leftrightarrow
\left\{
\begin{array}{l}
x^2+(-x+5)^2 = 25 …③ \\
y=-x+5 …②
\end{array}
\right.
\]
左の連立方程式から右の連立方程式が成り立つことは簡単に分かると思います。右の連立方程式からも左の方程式を導くことができます。
ただし、次の変形は同値変形ではありません。右向きの矢印だけ成り立つ変形です。
\[
\left\{
\begin{array}{l}
x^2+y^2 =25 …①\\
y=-x+5 …②
\end{array}
\right.
\Rightarrow
\left\{
\begin{array}{l}
x^2+y^2 =25 …① \\
x^2+(-x+5)^2 =25 …④
\end{array}
\right.
\]
上の式変形は逆は成り立ちません。式変形後の方程式から元の方程式に戻すことができないからです。右の連立方程式から左の連立方程式を導くときに、①から④を引くと、\(y=-x+5\)以外にも\(y=x-5\)も出てきてしまい、元の連立方程式が再現できないためです。
つまり、同値変形をしようと試みるときには、右の矢印と左の矢印の両方が成り立っているかどうか確認することが大切です(必要性と十分性の両方が必要)。
円の方程式のときによく使う同値変形
同値変形には山ほど変形がありますが、円の方程式のときによく使う同値変形があります。それが次の同値変形です。
\[
\left\{
\begin{array}{l}
①\\
②
\end{array}
\right.
\Leftrightarrow
\left\{
\begin{array}{l}
① \\
①ー②
\end{array}
\right.
\]
※①、②は式①、式②を表す。
右の矢印と左の矢印の両方成り立つので、上式変形は同値変形です。左の連立方程式と右の連立方程式の意味は同じです。連立方程式を解くとき、わざわざこのような変形する人はいないですが、2つの円の交点を通る直線の方程式を求めるときには有効です。
連立方程式の交点は変わらない
連立方程式を解くと、2式の交点が求められます。同値変形をしても式の意味は変わらないのですから、連立方程式を同値変形しても、交点は変わりません。例えば、次の同値変形は交点を変えていません。
\[
\left\{
\begin{array}{l}
y = x + 1 …①\\
y = -x + 1 …②
\end{array}
\right.
\Leftrightarrow
\left\{
\begin{array}{l}
y = x + 1 …① \\
0=2x …①ー②
\end{array}
\right.
\]
図示すれば、

確かに交点は変わっていません。
簡単な例でやっているので、当たり前の話に聞こえるかもしれませんが、このことはどんなときでも成り立ちます。
2つの円の交点を通る直線の方程式を求める問題
では、具体的に問題を見ていくことにしましょう。
例題:2つの円の交点を通る直線の方程式を求める問題
色々な問題集に載っている有名な問題を解いてみることにします。
\( xy \)平面上の2つの円\(C_1\):\(x^2+y^2=25\),\(C_2\):\( (x-4)^2+(y-3)^2 = 2 \)について,\(C_1\),\(C_2\)の2つの交点を通る直線の方程式を求めよ。
方針
2円の交点を求めようとせず、次の同値変形から求めましょう。
\[
\left\{
\begin{array}{l}
①\\
②
\end{array}
\right.
\Leftrightarrow
\left\{
\begin{array}{l}
① \\
①ー②
\end{array}
\right.
\]
同値変形では,2つの式の交点を変えないことを意識して問題を解きましょう。
\[
\left\{
\begin{array}{l}
x^2+y^2=25\\
(x-4)^2+(y-3)^2 = 2
\end{array}
\right.
\]
展開して
\[
\left\{
\begin{array}{l}
x^2+y^2 – 25=0 …①\\
x^2 + y^2 – 8x – 6y + 23 = 0 …②
\end{array}
\right.
\]
上記のように①、②と置くことにします。あらかじめ①ー②を求めてみると、
\begin{eqnarray*} ①-② &=& x^2+y^2 – 25 – \{ (x-4)^2+(y-3)^2 – 2 \} \\ &=& x^2+y^2 – 25 – ( x^2 + y^2 – 8x – 6y + 23 ) \\ &=& 8x + 6y – 48 \\ &=& 0 \end{eqnarray*}
両辺2で割ると、
$$ 4x+3y-24=0 $$
次の連立方程式を考える。
\[
\left\{
\begin{array}{l}
x^2+y^2=25 …①\\
(x-4)^2+(y-3)^2 = 2 …②
\end{array}
\right.
\]
同値変形により、次の連立方程式を得る。
\[
\left\{
\begin{array}{l}
x^2+y^2=25 …①\\
4x+3y-24=0 …①ー②
\end{array}
\right.
\]
連立方程式の同値変形では交点を変えない。すなわち、①と②の連立方程式と①と①ー②の連立方程式では交点は変わっていない。よって、\(C_1\),\(C_2\)の2つの交点を通る直線の方程式は
$$ 4x+3y-24=0 $$
今回は、同値変形により二つの円の交点を通る直線の方程式を求めましたが、円束という考え方を用いて直線の方程式を求めることもできます(問題集にはこちらの解法で回答が書いてあることも多いです)。
しかしながら、「円束」での考え方はやや難しく、理解に時間を要すると思います。また、円束での解き方にも色々な流派があり、ややこしいです…。\(k\)だけの文字を使って回答する流派や\(k\)と\(l\)の2文字を使って回答する流派など…
それでも気になる人は、当ブログの「直線束」や「円束」のブログをご覧ください。いきなり円束を理解するのは難しいと思うので、まずは直線束から理解するのがよいかと思います。
演習:2つの円の交点を通る直線の方程式を求める問題
(1)中心が\( a, b\),半径が2の円の方程式の方程式を求めよ。
(2)円\(x^2+y^2=9\)と(1)の円との2つの共有点を通る直線の方程式が\(6x+2y-15 = 0\)となるような\(a, b\)を求めよ。
おわりに
今回は、2つの円の交点を通る直線の方程式の求め方について解説しました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。