今回は、通過領域の問題の解き方について、ファクシミリ法(すだれ法)を用いる方法で解説していきます。
通過領域とは
通過領域の問題とは、パラメータの入った方程式が与えられて、その方程式が変化するときに、通りうる領域を求める問題のことです。
通過領域の問題は、解き方が決まっています。通過領域の問題は3つの解き方があります。
① 解の存在条件
② ファクシミリ法(すだれ法)
③ 包絡線
①の「解の存在条件」の解法と②の「ファクシミリ法」は重要です。まずは①と②の解法を理解しましょう。
③の包絡線を使った方法はそれほど重要ではありません。というのも、③の解法は使える問題が限られている(使える問題が少ない)ので、解法を理解しても、役に立たないことが多いためです。また、包絡線を用いて解ける問題は、①か②の解法で解けます。包絡線を使った解法については、余裕があれば、理解すれば良いと思います(必須ではない)。
一気に3つの解法を理解するのは大変ですから、この記事ではとりあえず②の「ファクシミリ法(すだれ法)」の解法で通過領域を求める方法で解説したいと思います。
通過領域の求め方
②の解法の場合、次の方法で通過領域は求めることができます。
① \(x=X\) を固定して,\(t\) のみ動かし,\(y\) の範囲を調べる(縦線を作る)。
② \(X\) を動かし,縦線の集まりとして通過領域を求める。
すなわち、1つ変数を固定して、縦線を作り、通過領域を求めます。
なぜ縦線で考えるのか
では、なぜ縦線で考えると、通過領域が求められるのでしょうか。
例として、次の問題を考えることにします。
例:縦線で考える
直線 \(y=tx\) について,\(t\) が \(0 \leq t \leq 1\) の範囲で変化するとき,この直線が通りうる領域を図示せよ。
この程度の問題であれば、式変形をするまでもなく、答えを求められると思います。
\(y=tx\) について、傾き \(t\) が \(0 \leq t \leq 1\) の範囲で変化するので、答えは下図のようになります。ただし、境界線を含みます。

ここで、例えば、\( x=1 \) で固定して考えてみることにしましょう。

\(x=1 \) で固定すると、\( y=t \)となります。すなわち、\( 0 \leq y \leq 1 \) となります(縦線ができる)。これより、\(x=1 \) の通過領域は \( 0 \leq y \leq 1 \) と求めることができます。
次に、\( x=2 \) で固定して考えてみることにしましょう。

\(x=2 \) で固定すると、\( y=2t \)となります。すなわち、\( 0 \leq y \leq 2 \) となります(縦線ができる)。これより、\(x=2 \) の通過領域は \( 0 \leq y \leq 2 \) と求めることができます。
このようにして、具体的な値を定めると、縦線ができ、通過領域の一部分を求めることができます。
では、一般的に \( x=X \) で固定して考えてみることにしましょう。
\(x=X \) で固定すると、\( y=Xt \)となります。すなわち、
\[
\left\{
\begin{array}{l}
0 \leq y \leq X \; (X \geq 0) \\
X \leq y \leq 0 \; (X \leq 0)
\end{array}
\right.
\]
となります。これは \(X \geq 0\) の範囲で \( 0 \leq y \leq X \) において、縦線ができ、\(X \leq 0\) の範囲で \( X \leq y \leq 0 \) において、縦線ができるということを意味しています。

固定した \(X\) を動かすと、次のように縦線がたくさんできます。

このように、縦線の集合が通過領域となります。
\(x=X\) を固定して,\(t\) のみ動かす
\( \downarrow \)
\(y\) の範囲を調べ、縦線を作る
\( \downarrow \)
縦線の集合を通過領域とみなす
例題:通過領域
直線 \(y=2ax+a^2\) について,\(a\) がすべての実数値をとって変化するとき,この直線が通りうる領域を図示せよ。
方針
通過領域を求めるには、\(x=X\) を固定して,\(a\) のみ動かし,\(y\) の範囲を調べて(縦線を作る)から \(X\) を動かし,縦線の集まりとして通過領域を求めればよいのでした。
\(x=X\) を固定する。
$$ y=2aX+a^2 $$
与式を \(a\) について平方完成すると、
$$ y=(a+X)^2-X^2 $$
\(a\) が全ての実数をとって動くとき、\(y\) のとりうる範囲は、
$$ y \geq -X^2 $$
となる。よって、求める領域は
$$ y \geq -x^2 $$
である。この領域を図示すると、次のようになる(ただし、境界線を含む)。

\(y\) のとりうる範囲についてですが、\( y=(a+X)^2-X^2 \) の範囲が下に凸な関数であり、最小値 \(m\) は \( m=X^2 \) なので、とりうる範囲は \( y \geq -X^2 \) となります。
演習:通過領域
\(k\)を実数とする。直線\(L\)を \(y=kx+1-k-k^2\) とする。\(k\) の値が実数全体を動くとき,直線 \(L\) が通る範囲を求め,図示せよ。
おわりに
今回は、通過領域の問題をファクシミリの法で解く解法について扱いました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。