フィボナッチ数列と黄金比について解説していきます。
フィボナッチ数列とは
フィボナッチ数列とは前の数と前々の数を足した数を並べた数列のことです。具体的には、次のような数列のことをいいます。
フィボナッチ数列
1,1,2,3,5,8,13,21,34,45,…
漸化式で表すと次のようになります。
$$ a_1=1,a_2=1,a_{n+2} = a_{n+1} + a_n $$
初項と第2項は1とし、第3項以降は前の数と前々の数を足した数とします。例えば、第3項は
$$ a_3 = a_1 +a_2 = 1+1=2 $$
となっており、第4項は
$$ a_4 = a_2+a_3 =1+2 =3 $$
となっています。
フィボナッチ数列の一般項
フィボナッチ数列は一般項を求めることができます。次がフィボナッチ数列の一般項になります。
数列 {\(a_n\)} が次の条件によって定められるとき、
$$ a_1=1,a_2=1,a_{n+2} = a_{n+1} + a_n $$
一般項 \(a_n\) は次のようになる。
$$ a_n = \frac{1}{\sqrt{5}} \left \{ \left( \frac{1+ \sqrt{5}}{2} \right)^n – \left( \frac{1- \sqrt{5}}{2} \right )^n \right \}$$
このフィボナッチ数列の一般項は高校範囲で求めることができます。フィボナッチ数列の一般項を求めてみましょう。
数列 {\(a_n\)} が次の条件によって定められるとき、一般項 \(a_n\) を求めよ。
$$ a_1 =1,a_2=1,a_{n+2}=a_{n+1} + a_n $$
方針
例題で与えられた数列はフィボナッチ数列です。フィボナッチ数列は3項間漸化式ですので、3項間漸化式の解法で解くことができます。
まず、\(a_{n+2}\)を\(x^2\)、\(a_{n+1}\)を\(x\)をおきかえた次の2次方程式(特性方程式)を解きます。
$$ x^2-x-1 = 0 $$
この解は $$ x=\frac{1\pm \sqrt{5}}{2} $$ です。ここで、$$ \alpha = \frac{1+ \sqrt{5}}{2} ,\beta = \frac{1- \sqrt{5}}{2} $$とおきます。すると、次のように変形できます。
\[
\left\{
\begin{array}{l}
a_{n+2} – \alpha a_{n+1} = \beta(a_{n+1} – \alpha a_n) \\
a_{n+2} – \beta a_{n+1} = \alpha (a_{n+1} – \beta a_n)
\end{array}
\right.
\]
あとはこの漸化式を解きます。
与えられた漸化式は、$$ \alpha = \frac{1+ \sqrt{5}}{2} ,\beta = \frac{1+ \sqrt{5}}{2} $$とおくと、次のように2通りに変形できる。
\[
\left\{
\begin{array}{l}
a_{n+2} – \alpha a_{n+1} = \beta(a_{n+1} – \alpha a_n) …(1)\\
a_{n+2} – \beta a_{n+1} = \alpha (a_{n+1} – \beta a_n) …(2)
\end{array}
\right.
\]
(1)式より数列 \( \{ a_{n+1} – \alpha a_n \} \) は初項 \(a_2 – \alpha a_1= 1- \alpha \)、公比 \( \beta\) の等比数列であるから、
$$ a_{n+1} – \alpha a_n = \beta^{n-1} ( 1- \alpha ) …(3)$$
同様に、(2)式より数列 \( \{ a_{n+1} – \beta a_n \} \) は初項 \(a_2- \beta a_1=1 – \beta \)、公比 \( \alpha\) の等比数列であるから、
$$ a_{n+1} – \beta a_n = \alpha^{n-1} ( 1- \beta )…(4)$$
(4)ー(3)から
$$ (\alpha-\beta) a_n = \alpha^{n-1} ( 1- \beta ) – \beta^{n-1} ( 1- \alpha ) $$
よって
$$ a_n = \frac{1- \beta}{\alpha-\beta} \alpha^{n-1} – \frac{1- \alpha}{\alpha-\beta} \beta^{n-1}$$
\( \displaystyle \alpha = \frac{1+ \sqrt{5}}{2} ,\beta = \frac{1- \sqrt{5}}{2} \)であるから、
$$ a_n = \frac{1}{\sqrt{5}} \left \{ \left( \frac{1+ \sqrt{5}}{2} \right)^n – \left( \frac{1- \sqrt{5}}{2} \right )^n \right \}$$
このようにフィボナッチ数列の一般項を求めることができました。
フィボナッチ数列の活用例
フィボナッチ数列はいろいろな事象と関係することが知られています。ここではその一例を紹介したいと思います。
生物の増殖の予測
フィボナッチ数列の起源として研究されたのが、生物増殖の予測に関する問題です。フィボナッチ(イタリアの数学者)はうさぎのつがいについて次の問題を提起しました。
ウサギのつがいは、生まれてから2か月経つと雌雄一対の子どもを産むという。このとき、\(n\) ヶ月後には、合計何つがいになっているか。
月末の数に着目して数列を作ると、
1,1,2,3,5,8,13,21,34,45,…
となり、フィボナッチ数列となります。
株や外貨の変動予測
株や外貨の変動予測の指標として使われることがあります。フィボナッチトレースメントは、上昇相場における押し目や下降相場における一時的な戻りの目標価格を判断する指標として使われます。そして、フィボナッチトレースメントレベルはフィボナッチ数列の比率に由来して決められています。
フィボナッチ数列と黄金比
フィボナッチ数列と黄金比の関係を探ります。
1,1,2,3,5,8,13,21,34,45,…
隣り合う2数の比
フィボナッチ数列の隣り合う2数の比を並べると、次のようになります。
$$ \displaystyle \frac{1}{1},\frac{2}{1},\frac{3}{2},\frac{5}{3},\frac{8}{5},\frac{13}{8},\frac{21}{13},\frac{34}{21},\frac{55}{34},… $$
この比は \( \displaystyle \frac{1+\sqrt{5}}{2} \) に近づきます。この \( \displaystyle \frac{1+\sqrt{5}}{2} \) は黄金比に表れる数です。
数列 {\(a_n\)} が次の条件によって定められるとき、\( \displaystyle \lim_{n\to \infty} \frac{a_{n+1}}{a_n}\) を求めよ。
$$ a_1 =1,a_2=1,a_{n+2}=a_{n+1} + a_n $$
方針
例題で与えられた数列はフィボナッチ数列です。例題1でフィボナッチ数列の一般項を求めていますので、それを利用します。
$$ a_n = \frac{1}{\sqrt{5}} \left \{ \left( \frac{1+ \sqrt{5}}{2} \right)^n – \left( \frac{1- \sqrt{5}}{2} \right )^n \right \}$$
ただ、このままだと計算が煩雑になるので、
\( \displaystyle \alpha = \frac{1+ \sqrt{5}}{2} ,\beta = \frac{1- \sqrt{5}}{2} \)とおき、
$$ a_n = \frac{1}{\sqrt{5}}( \alpha^n – \beta^n )$$
として計算します。
与えられた漸化式の一般項は$$ \alpha = \frac{1+ \sqrt{5}}{2} ,\beta = \frac{1- \sqrt{5}}{2} $$とおくと、次のようになる。
$$ a_n = \frac{1}{\sqrt{5}}( \alpha^n – \beta^n )$$
よって、
$$ \displaystyle \lim_{n\to \infty} \frac{a_{n+1}}{a_n} = \frac{\alpha^{n+1} – \beta^{n+1}}{\alpha^n – \beta^n} $$
分子分母 \(\alpha^n\) で割ると、
$$ \displaystyle \lim_{n\to \infty} \frac{a_{n+1}}{a_n} = \frac{\alpha – \beta \left(\frac{\beta}{\alpha}\right)^n}{1 -\left(\frac{\beta}{\alpha}\right)^n} $$
\(\alpha>\beta\) より、\( n \to \infty \) のとき、\( \displaystyle \left(\frac{\beta}{\alpha}\right)^n \to 0\)となるので、
$$ \displaystyle \lim_{n\to \infty} \frac{a_{n+1}}{a_n} = \alpha $$
となる。よって、
$$ \displaystyle \lim_{n\to \infty} \frac{a_{n+1}}{a_n} = \frac{1+ \sqrt{5}}{2} $$
黄金比とは
黄金比とは、次の値で表される比のことです。
$$ 1:\displaystyle \frac{1+ \sqrt{5}}{2}$$
次の図形は縦と横の長さの比が黄金比となっています。

次の①と②のどちらの図形の方がしっくりとくるでしょうか。

②の図形の方がしっくりくる人が多いと思います。①の図形は1:2で、②の図形は黄金比となっています。
黄金比はその美しさから、多くのデザインに採用されています。
有名なものだとピラミッドやミロのヴィーナス、パルテノン神殿に使われています。

おわりに
今回はフィボナッチ数列について解説しました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。