こんにちは。今回は「直線束」について解説していきます。
束の考え方
束とは、二つの図形(直線や円など)が交点を持つとき、その交点を通る他の図形の方程式を表す考え方となります。二つの図形が直線の場合を「直線束(ちょくせんそく)」、円の場合を「円束(えんそく)」といいます。入試では円束がよく出題されますが、いきなり円束を勉強するのはハードルが高く難しいので、比較的簡単な直線束から勉強するのが良いかと思います。
この記事では直線束についてのみ扱います。円束について勉強したい方は次の記事をご覧ください。
直線束とは
直線束とは、二つの直線が交点を持つとき、その交点を通る他の直線を表す考え方のことです。具体的には次のことを指すことが多いです。
特に後半の\( ax+by+c+k(px+qy+r)=0 \) は \( ax+by+c=0 \) と \( px+qy+r=0 \) の交点を通る直線を表すというのが大切で、実際に問題ではこの考え方を使うことになります。
この直線束の考え方について解説します。
2つの交点を通る直線を表す理由
まず、\( ax+by+c+k(px+qy+r)=0 \) が \( ax+by+c=0 \) と \( px+qy+r=0 \) の交点を通る直線を表す方程式になっている理由を説明します。
\( ax+by+c+k(px+qy+r)=0 \) が\( k \)に関わらず成立するためには、
\[
\left\{
\begin{array}{l}
ax+by+c=0 \\
px+qy+r=0
\end{array}
\right.
\]
となる必要があります。これは恒等式の考え方を用いています。
また、上の連立方程式の解は、\(ax+by+c=0 \) と\( px+qy+r=0 \) の交点を表していますよね。すなわち、\( ax+by+c+k(px+qy+r)=0 \) という方程式は \(ax+by+c=0 \) と \( px+qy+r=0 \) の交点を表す方程式になっています。
例えば、次の方程式
$$ 4-y + k(x-2) = 0 $$
は\(k\)の値に関わらず
\[
\left\{
\begin{array}{l}
4-y=0 \\
x-2=0
\end{array}
\right.
\]
の連立方程式の解を通ります。
すなわち、方程式 \(4-y + k(x-2) = 0\) は点 \( (x,y)= (2,4) \)を通るということです。
このことは \(4-y + k(x-2) = 0\) を変形し、 \(y = k(x-2) +4 \) という方程式にすると一目瞭然です。
\(y = k(x-2) +4 \) を図にすれば、下図のようになります。
方程式 \(4-y + k(x-2) = 0\) はどのような \( k \) に対しても、点 \( (x,y)= (2,4) \)を通りますね。
\( px+qy+r=0 \) を表すことのできない理由
なお \( ax+by+c+k(px+qy+r)=0 \) は \(ax+by+c=0 \) と \( px+qy+r=0 \) の交点を表すすべての直線を表せるわけではなく、\( px+qy+r=0 \) を表すことができません。例えば、先ほどの方程式
$$ 4-y + k(x-2) = 0 $$
は \( x-2 = 0\) を表すことができません。\( 4-y + k(x-2) = 0 \) を変形すれば、\( y = k(x-2) +4 \) となります。\( y=ax+b\) という形は \(y \) 軸に平行な直線を表すことができませんので、\(x-2=0\) を表すことができないことがわかると思います。
一般的には、\( ax+by+c+k(px+qy+r)=0 \) が全ての直線を表せるわけではなく、\( px+qy+r=0 \) は表せないということになります。
このことは、数学的にはほとんど問題はないので、問題を解くときにはあまり気にせず、解いて大丈夫です。
厳密な証明はこの記事の後半に載せました。
「直線束」を使った2直線の交点を通る直線の表し方
以上のことがわかったら、実際に問題を解いていくことにしましょう。
例題:直線束
方針
直線束の考え方を使って求めます。すなわち、
\( ax+by+c=0 \) と \( px+qy+r=0 \) の交点を通る直線は\( ax+by+c+k(px+qy+r)=0 \) によって表すことができる
ことを使って求めます。
演習:直線束
おわりに
今回は直線束について解説しました。直線束が理解できたら、次は円束にチャレンジしましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考:直線束
\( ax+by+c+k(px+qy+r)=0 \) という方程式が \(ax+by+c=0 \) と \( px+qy+r=0 \) の交点を表す方程式になっていることを示す。ただし、この2直線は傾きが異なるとする。
まず、\(ax+by+c=0 \) と \( px+qy+r=0 \) の交点を通ることを示す。この2直線は傾きが異なるので、1点で交わる。その交点\( (x_0,y_0) \)は、\(ax_0+by_0+c = 0\)また\(px_0+qy_0+r = 0\)を満たすので、\(k\)の値に関係なく、\( ax_0+by_0+c+k(px_0+qy_0+r)=0 \) という方程式が成り立つ。すなわち、\( ax+by+c+k(px+qy+r)=0 \) は2直線の交点を通ることが示された。
次に直線であることを示す。\(x\),\(y\)について整理すると、\( (a+kp)x+(b+kq)y+c+kr=0 \) となる。2直線は傾きが異なるため、\(a+kp=0\)と\(b+kq=0\)を同時に満たす\(k\)は存在しない。よって、\( ax+by+c+k(px+qy+r)=0 \) は直線を表している。なお、この直線は \(ax+by+c=0 \) だけは表さない。
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